よろず編集後記

よろず編集者を目指す井内千穂のブログです。

音楽

もし高校生がプッチーニのオペラ『蝶々夫人』を観たら

「もしドラ」のような仮定の話ではなく、実際に新国立劇場はオープン翌年の1998年以来「高校生のためのオペラ鑑賞教室」を開催しており、毎年約1万人の高校生がオペラを観る機会を得ている。ほとんどの生徒にとっては「初めてのオペラ」だ。その中で最も頻繁…

ウェイウェイさんは今どこに

5月の半ば以降、怒濤の取材と原稿書きに明け暮れて気がついたら猛暑の残暑。北海道への一泊取材ツアーから帰ってきた翌日、二胡奏者のウェイウェイ・ウーさんのメルマガが届いた。「次は北海道!」と。そうか!ウェイウェイさんのソロデビュー15周年記念コン…

太陽の讃歌と惑星~東響コーラス30周年②

4月22日土曜日夜、東京交響楽団の今シーズンの定期公演は、なんとオーケストラなしで開幕。ミューザ川崎のステージには東響コーラスのメンバーが並び、「太陽の讃歌」の日本初演に臨んだ。 www.japantimes.co.jp 旧ソ連タタール共和国出身で現代音楽の作曲家…

アマチュア合唱団がプロオケと共演~東響コーラス30周年①

プロってなんだろう?アマチュアってなんだろう?とまだ考え続けている。 プロの東京交響楽団の専属合唱団である東響コーラスがアマチュアであると知った時は驚いたものだ。今回はこのやや特殊なアマチュア合唱団の30周年にあたり紹介することを提案し、4月2…

ヨーヨー・マとシルクロード・アンサンブル⑤ ヨーヨー・マの言葉

3月3日付The Japan Times掲載のシルクロード・アンサンブルの記事。 www.japantimes.co.jp 記事本体よりずっと長くなってしまった編集後記の最終回です。 今回の記事化について、エディターからの条件は「ヨーヨー・マのコメントをもらうこと」でした。アン…

ヨーヨー・マとシルクロード・アンサンブル④ 21世紀の尺八

3月3日付The Japan Times掲載のシルクロード・アンサンブルの記事のかなり長々しくなってしまった編集後記その4です。(いつのまにかもう4月ですが) アンサンブルのメンバーへのビデオ・インタビュー。3人目はもう一人の日本人アーティスト、尺八奏者の梅…

ヨーヨー・マ&シルクロード・アンサンブル③  シリアのクラリネット奏者

創設者ヨーヨー・マのほか20人のコア・メンバーにゲスト・パフォーマーなども加わるシルクロード・アンサンブル。世界各国から集まったアーティストたちはみな素晴らしく、一人一人深く掘り下げれば本が何冊も書けそうですが、今回の記事を書くにあたり、新…

ヨーヨー・マ&シルクロード・アンサンブル② 藤井はるかさんに聞く

打楽器奏者 藤井はるかさんとの出会いは昨年の10月。妹の藤井里佳さんとの打楽器デュオ うたりをご紹介した時でした。打楽器姉妹のお母様はマリンバ奏者の藤井むつ子さんです。すごいなあ・・お二人にお話を伺いながら、元・学生オケ打楽器パートだった私は…

ヨーヨー・マ&シルクロード・アンサンブル① グラミー賞の快挙

世界的チェリストの一人ヨーヨー・マは5歳でデビューし、グラミー賞だけでも既に18回も受賞しているそうですが、彼が立ち上げ、2000年から世界各国へのツアーを続けてきたシルクロード・アンサンブルのグラミー賞受賞は初めてのこと。 ・・・ということを迂…

ピアノ連弾の喜び

「ピアニストが二人いたら連弾ができるというものではない。」 公開ゲネプロの途中でピアニストの田崎悦子さんは語った。今回のゲストであるピアノデュオ ドゥオールの藤井隆史さんと白水芳枝さんから聞いた「忘れられない言葉」だという。「私もその仲間に…

蝶々夫人は死なず

「蝶々夫人」は決して好きなオペラではなく、観るたびに何とも言えずモヤモヤした気持ちになるのに、つい、また観たくなるのはなぜだろう? 最初に観たのは15年ぐらい前だったか、ベルリンに住んでいた頃のシュターツオパー(ベルリン州立歌劇場)。この時の…

プロの覚悟 ~アマチュア・オーケストラをめぐって③~

このところ、アマチュア・オーケストラのことを書いたり聴いたりしたおかげで、自分の気持ちを再確認し多くの人たちと共有できたのは嬉しいことだった。 一方で改めて感銘を受けたのは、プロの音楽家の道を選ぶ覚悟というものである。 マーラー祝祭オーケス…

人の心を打つ演奏 ~アマチュア・オーケストラをめぐって②~

2月6日付The Japan Timesに日本のアマチュア・オーケストラについての短い記事を書いた。 www.japantimes.co.jp 昨年、ちょうど新聞社を辞める頃にお誘いいただいて30年ぶりにオーケストラに参加させてもらった。そのマーラー祝祭オーケストラの今年の定期演…

青春のマイスタージンガー ~アマチュア・オーケストラをめぐって①~

驚いたことに「世界最古のオーケストラ」は日本の雅楽だそうだが、南蛮人や天正少年使節の時代は別として、明治以降に「西洋音楽」を受容した日本で本格的なオーケストラができたのは大正時代のこと。プロのオーケストラに先立って、学生やアマチュアのオー…

舞台で輝くママ友

開演ぎりぎりに駆け込んだら、二人は颯爽と舞台に現れた。 ひょえーカッコイイ!! 土曜の昼下がり。立川のたましんRISURUホールでTAMAMA-DUOのピアノ連弾コンサートが始まった。200席余りの小ホールにほぼいっぱいのお客さんを前に堂々たる姿は、一緒にボラ…

愛の喜びと悲しみのクライスラー

本年初記事は1月6日付でジャパンタイムズに載った。今年も前職への感謝の気持ちを忘れず、少しずつでも書き続けていこう。 www.japantimes.co.jp 元々は、あるヴァイオリンリサイタルについて小さなお知らせ記事を頼まれサラッと書いて昨年末掲載予定だった…

バイエルン放送交響楽団来日公演@ミューザ川崎

大学時代の先輩に誘っていただき、来日中のバイエルン放送交響楽団の演奏会に出かけた。 久々のミューザ川崎は早くもクリスマスムードに包まれている。 今回は舞台下手を見下ろす3階席だったので、舞台上のハープやオルガンあたりは死角になったものの、盛り…

御宿でも黒沼ユリ子さんのヴァイオリンはひるまない

10月1日に千葉の御宿では黒沼ユリ子さんの「ヴァイオリンの家」が初めて一般公開されたはずだ。 chihoyorozu.hatenablog.com 9月30日のオープニングでは、黒沼ユリ子さんと駐日メキシコ大使や御宿町関係者のご挨拶がひと通り終わってから、ヴァイオリンの演…

御宿に黒沼ユリ子さんのヴァイオリンの家がオープン

2014年1月。紀尾井ホールで開かれた引退リサイタルの舞台でアンコールに応える前にヴァイオリニストの黒沼ユリ子さんは客席に語りかけ、突然宣言した。 「私はこのたび日本に帰ってくることを決意しました」 会場からは驚きのどよめきの後、温かい拍手が沸き…

安達朋博ピアノリサイタル@杉並公会堂2016その3 ~打ち上げ編~

演奏会の楽しみの中に、終演後の打ち上げというものがある。 高校時代、文化祭のフィナーレを飾る吹奏楽部の本番後、帰宅が遅いと親から叱られたのが打ち上げの最初だったろうか。大学時代はまさに「のだめカンタービレ」的な宴会を繰り広げる学生オケにいた…

安達朋博ピアノリサイタル2016@杉並公会堂その2 ~裏方編~

演奏会って何だろう? 好きな曲をネットからダウンロードしたりCDを買ったりして一人で聴くのと何が違うんだろう? と安達朋博ピアノリサイタルに行って改めて考えてしまう。 chihoyorozu.hatenablog.com 安達朋博氏の演奏を最初に聴いたのは、コンサートで…

安達朋博ピアノリサイタル2016@杉並公会堂その1 ~本番編~

なぜ私はピアノを聴きに行くのか? とよく自問する。 東京では毎日のようにあちこちで、ピアノだけでもいくつもの演奏会が開かれ、自分も慌ただしい日々、どれもこれもは聴きに行けない中で、あれではなくそれでもなく「これを聴きに行こう」と決めるのはよ…

ドキュメンタリー映画『FAKE』・・・佐村河内氏から見れば

新垣隆氏についての記事を書くにあたり、やはり、物事は両面から見ないと・・・と思い、あのスキャンダル後の佐村河内守氏に迫ったという森達也監督のドキュメンタリー映画『FAKE』を観に行きました。 しかも2回行ってしまいました。というのも、「誰にも言…

エンタメとしての音楽と芸術としての音楽の違いって?

エンタメとしての音楽と芸術としての音楽の違いってなんでしょう? それは誰かが決められるものなんでしょうか? このたび新垣隆氏の記事を書くにあたり、それなりに考えてみましたが、考えれば考えるほどわからなくなります。 新垣氏自身も著書『音楽という…

『HIROSHIMA』を超えて『連祷-Litany-』へ、広島より。

ずっと気になっていた新垣隆さんのことを書く機会をいただいたのはとても有り難いご縁でした。ジャパンタイムズを辞めてから初めての音楽の署名記事です。 何回かに分けて振り返ってみたいと思います。 1.『HIROSHIMA』を超えて『連祷-Litany-』へ、広島…