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よろず編集後記

よろず編集者を目指す井内千穂のブログです。

中世は単なる暗黒時代ではなく歴史は繰り返すのかも

記事 事業

ありがたいことに、前職からも折に触れて仕事をいただき、このたび8月22日付のThe Japan TimesのCareer Development特集に記事を書かせていただいた。 

これは大学や学校をスポンサーとして、年に2回、新学期が始まる前の9月と3月に発行される広告特集であるが、コンテンツは広告主に関係なく(むしろ広告主の宣伝記事はNG)、海外留学経験者やキャリア教育に携わる人に経験談を聞くというものである。

毎回、登場していただく方々が素晴らしく、非常にインスパイアされる役得なインタビューで、今回お願いしたWomen Help Women代表理事 西田治子さんのお話も大変興味深かった。

東大卒、財閥系シンクタンク勤務を経て米国留学、マッキンゼーに転職してマネージャーとして20年活躍後、震災を契機にNGOを立ち上げ、残りの人生はソーシャルビジネスに捧げるという西田さん。あまりにも立派なご経歴に圧倒されつつ、ご本人から率直かつ淡々とした語り口でこれまでの一歩一歩をお聞きしていると、やはり、あらゆる人生の歩みには、資質も環境も意志も努力も含めて、それなりの理由があるのだった。

原点は幼稚園の砂場だった

「砂場で一心不乱に何か作り始めると、ほかの子どもの動向に全く気づかなくなる子」だった幼児期。みんなが部屋に入っても一人だけ園庭に残っていたり、時には屋根に上ってしまったり。

先生たちは手を焼いたそうだが、立派だったのはお母上。注意を受けても「だめじゃないの!やめなさい!」なんて言わず、彼女のペースでのびのびとやらせてくれたという。(息子たちのなけなしの芽を摘むようなことをずいぶん言っていた自分を今さら反省する・・嗚呼)

高校時代は映画にハマり、周りがとっくに受験勉強を始めていることにも気づかずせっせと映画館に通っていたが、ある時、お父上の本棚にあった塩野七生の『チェーザレ・ボルジア あるいは優雅なる冷酷』を読んで今度はルネッサンスにハマった。なんでルネッサンスは起きたのか?その前はどうだったんだ?ということで中世に興味を持つようになった浪人中のある日、偶然通りかかった「木村尚三郎先生講演会」の会場に吸い込まれるように入っていたく感銘を受け、「この人の下で中世の歴史を学ぶために」猛烈に勉強して東大に合格するのである。

マイペースな好奇心に導かれ「これだ!」という目的意識がはっきりすればモチベーションも上がるということか。大人は世間に順応することも必要だけれど、人間やはり好奇心のままに動く部分も持ち続けたいものだと思った。

均等法前に就職した世代の苦労と職場での奮闘ぶり、自費で米国留学というあたりにも、目的意識の強さと我が道を行くマイペースさは健在である。

コミュニティの再生には中世もモデルに

面白いのは、資本主義社会におけるビジネスの最前線を行くようなマッキンゼーで20年も働いてきた人がソーシャルビジネスの世界に転じられ、しかも、今後の方向性を考える上で、中世の物々交換にちょっと戻る社会モデルもアリとおっしゃっていることだ。

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写真は気仙沼の藍工房 Women Help Women提供

とくに震災後、Women Help Womenでは被災地の女性たちの経済的自立を応援するプロジェクトとして、手仕事による高付加価値なモノづくりを推進している。地域のコミュニティ内でのモノやサービスの交換は、必ずしもおカネを介さなくても可能になるのではないか? 昨今浸透しつつあるシェアリングエコノミーの考え方やブロックチェーンなどのテクノロジーも動員すれば、これまでと違った社会の仕組みを作れるかもしれない。

お話を聞いていて、え?そんなこと本当にできるの?!と驚きながらもワクワクするのであった。そういうコミュニティではどんなメディアが必要とされるだろうか? 電子かわら版とか、寄り合い的なオフ会とか・・・想像が膨らむ。

13世紀のイタリア。十字軍遠征先でアラブのカリフと平和的な交渉を進めるような柔軟さを持った神聖ローマ皇帝フリードリヒ2世は、ローマ教皇からは破門されたが、その統治下のシチリア島では様々な国籍の人々が厚遇され国際色豊かで多文化な社会が栄えたという。そういう社会が中世にもあったのだ・・・かつて西田さんが卒業論文として取り組んだテーマである。

歴史に学ぶことはできるか。