立川に野外劇場出現!!
風煉(ふうれん)ダンスによる野外劇公演『スカラベ』の初日に行ってきた。
家を出た頃、今にも降り出しそうに見えた西の空の怪しい雨雲だったが、立川に来てみると降ってなくてよかった。このところずいぶん涼しくなってきた。
立川駅から歩いて15分ほどの立川市民会館の隣にある立川子ども未来センター前の芝生広場に、雨にも負けず制作されたという舞台装置。裏から見ると学園祭のようだ。ぐるっと回って表通りから反対側に入口がある。
野外劇なんて久しぶり・・いやもしかすると初めてかもしれない。少なくともこういうのは。何が始まるんだろう?ワクワク。
客席の上にはいちおう風雨をしのぐビニールの屋根がついている。また、受付で虫除けスプレーも貸してもらえる。初日の入りは上々。まずは、風煉ダンス主宰で座付き戯作者の林周一さんがご挨拶。
『スカラベ』は、1994年に福岡の特設野外ステージで上演され、「幻めいた"伝説"として演劇史周辺の波間を浮遊」していたそうだ。初演以来実に22年ぶりの再演とか。
ますます興味津々。
・・・「タイヨウ」のない暗黒の街。闇市場が立ち、闇プロレスが繰り広げられ、闇鍋が煮えたぎる。26人のキャストが芝生を縦横無尽に歌い踊り語りまくり、闇市場に立つ店舗はしょっちゅう移動し、闇プロレスの仮設リングが出入りする。
「喧騒渦巻くエキゾチック群衆劇!」とチラシに書いてある。登場人物が26人もいるのに誰一人「その他大勢」という人がいなくて、それぞれのキャラが際立っている。順番に出てきてはスポットを浴びて見せてくれる単独プレーに爆笑しながら、始めは「この劇、ストーリーあるんやろか?こういう感じで最後まで?」と思ったぐらい混沌としていたが、いやいやどうして!
スピーディーな展開に引き込まれるうちに、やがて、なぜ街に「タイヨウ」がないのか? なぜ闇プロレスをやっているのか? そして、正面に建つ時計台の謎が次第に明らかにされる。
ただ一人「外」からやってきたのは、「何かを探し求めているんだけど何を探しているのかわからない」という糞玉男。衣装が丸い糞! 好きになったこの街のハイパーからくり人形の名を叫びながら丸い糞が疾走していく姿にはどうしても笑わずにはいられないのだが、彼こそは実は聖なる甲虫だったのか!
カブトムシもいれば、関西弁をしゃべるバッタもいるし、ゴキブリネズミのトリオもいい味出していた。肉屋に魚屋に古本屋。過労死寸前のコンビニ太郎とかベッドを背負って歌う猩紅熱の少女とかベトベトの宇宙人などなど、ケッタイな人々の存在感が半端ない。
渋さ知らズなどで活躍中の3人のミュージシャンの演奏も素晴らしかった。全曲オリジナルで生演奏。劇中歌のタイトルと歌詞がプログラムに載ってて、もう一度笑った。
「闇市場」「マラリア・キャリー」「お肉の歌」「デストピア鮮魚店」「猩紅熱少女合唱団」「ゴキブリネズミの歌」「闇鍋占いの歌」・・・もう一度聴きたい~ そして、権力者デラシネが歌う愛の歌「マイマラリア」は可笑しくも切ない。
猥雑な街に様々な人々が蠢き、あれこれ言い合い、時に殴り合うドタバタはこの世の有り様そのものだ。そんなもんだ、それでいいのだ!と笑い飛ばしつつ、世界を救う健気な糞転がしに涙してしまう不思議に前向きな物語なのであった。
最終日までにもう一度観られるとよいのだが・・・