よろず編集後記

よろず編集者を目指す井内千穂のブログです。

中学生サミット2017その② 中学生の疑問にNUMOが答える

瑞浪超深地層研究所で地下500メートルの坑道から地上に戻るとすっかり日が暮れている。宿泊先のホテルへ移動して夕食後、地層処分に関するトークセッションが行われた。長い一日だ。

この「中学生サミット」は東京工業大学の学術フォーラム『多価値化の世紀と原子力』(代表:澤田哲生助教)が主催する企画で、ここ数年、毎年1回開催されてきた。

・・・サミットのテーマは、『どうする!?核のごみ(高レベル放射性廃棄物)』である。その目標は、中学生の目線で、ダイアローグ(対話)やファシリテーションを行うことである。ポイントは二つある。①議論を自分たちで内省的かつ発見的に構築し、議論を楽しめるか、②立場(出身地域、原子力立地地域―都市消費地、学年、ジェンダーなど)を超えて、相手に配慮した意見の表明や対話ができるか、である。・・・(月刊『世界と日本』No.1263&No.1264合併号 澤田哲生著「原子力問題の諸相ーパラダイムシフトに向けて」より)

今回ファシリテーター役を担当する横浜の中学2年生の男子生徒3人から主催の澤田先生宛てに、「どんなサミットにしたいか」という要望書が事前に提出されており、オブザーバーも目を通す機会があったが、これが実に見事な内容。

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趣旨  国が使用済み核燃料の処分方法としている「地層処分」では、核燃料サイクルの一環として使用済み核燃料の再処理をした際に出る「高レベル放射性廃棄物」を埋めることとなっている。しかし応募自治体は未だにない。また、核燃料サイクルは、高速増殖原型炉もんじゅで続いたトラブル、その検証があいまいなままでの高速実証炉開発、さらに高速商用炉開発までの代替とされているプルサーマルの遅れ・経済性の悪さといった問題があり思うように進んでいない。

そんな中、国は、思い切って核燃料サイクル政策を捨て、これから出る使用済み核燃料は直接「地層処分」することを地味ながら研究し始めた。さらに国は、核燃料サイクル政策を続けるにしても、高レベル放射性廃棄物を「海洋底処分」することについても研究を始めた。私たちもこれらを選択肢の1つとして検証をすべきである。

よって本企画では、高レベル放射性廃棄物の地層処分、使用済み核燃料の直接地層処分、高レベル放射性廃棄物の海洋底処分について、それぞれメリット、デメリットを洗い出し、どれが良いのかを共に考えていく。

要望  超深地層研究所での見学事前講習では、昨年通り国が高レベル放射性廃棄物の地層処分を進める理由とその詳しい内容、および超深地層研究所の概要について参加者に説明していただきたく存じます。

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さらに、1日目の夕食後に参加者が説明を聴きたい5項目が列挙されている。

  1. 国が進めている核燃料サイクルとは何か。
  2. 国が使用済み核燃料の処分方法としている「地層処分」は、核燃料サイクルの一環であること。しかし、応募自治体は未だにない。また、核燃料サイクルには現在さまざまな問題が生じていて、あきらめるべきとの声もあること。
  3. 核燃料サイクルをあきらめる場合、使用済み核燃料は直接処分になること。
  4. そんな中、国が使用済み核燃料の直接地層処分の研究を始めたことと現在の研究状況。また、フィンランドスウェーデンでは使用済み核燃料を直接地層処分することになっていることとその詳しい内容。
  5. さらに最近、国が高レベル放射性廃棄物の「海洋底処分」の研究も始めたこととその理由、および高レベル放射性廃棄物の「海洋底処分」の内容、および現在の研究状況。

いやいや~ よく調べ、よく考えた堂々たる要望書。下手な大学生より大人っぽい文章に感心する。

かくして夕食後のトークセッションは、中学生からの上記疑問にNUMOが答えるという形で行われた。

NUMO=Nuclear Waste Management Organization of Japan(原子力発電環境整備機構)は、原子力発電により発生する使用済燃料を再処理する過程で発生する高レベル放射性廃棄物の最終処分(地層処分)事業を行なう日本の事業体である。

今回の回答者であるNUMOの加来謙一課長のクールで丁寧な解説に、中学生と一緒に耳を傾ける。

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そもそも核燃料サイクルとは何か?という説明の後、その実現性に関してよく受ける質問とそれに対する回答が紹介された。

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Q:「青森県六ヶ所村の再処理施設は本当に稼働できるのか?」

A:技術的な課題は解決済みだが、東日本大震災福島第一原発を踏まえて制定された原子力規制委員会の新基準に適合するための取り組みが進められており、現時点では再処理工場の竣工時期は2018年度。

Q:「もんじゅ廃炉が決まったが、核燃料サイクルは機能するのか?」

A:政府は2016年12月に原子力関係閣僚会議を開き、JAEA高速増殖炉もんじゅ」(福井県敦賀市)の廃炉を正式に決定。一方、エネルギー資源を有効活用する「核燃料サイクル」政策を維持するため、もんじゅよりも実用化段階に近くなる「実証炉」の開発に踏み出す方向性を打ち出した。その一つの選択肢として、フランスが開発に取り組んでいるASTRID炉の研究開発に参画することも検討されている。

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そして、再処理・ガラス固化体処分と使用済み燃料の直接処分の比較、直接処分に関する検討、地層処分事業で先行しているフィンランドスウェーデンの事例、さらに、海洋底処分について、パワポのスライドを見せながらの説明が粛々と続いた。

寡聞にして知らなかったのは、沿岸海洋下処分のことである。

海の底に処分する海洋底処分はロンドン条約により禁止されているが、陸域から沿岸海底下にアクセスする処分方法であればロンドン条約に抵触しないという。なぜ沿岸なら良いのか、その法解釈は今一つよくわからなかったけれど、一つの可能性として検討されているらしい。

「沿岸海底下等における地層処分の技術的課題に関する研究会とりまとめ」を 策定しました (METI/経済産業省)

なお、直接処分と再処理を比較したこの興味深いスライドについて、高レベル放射性廃棄物を軽水炉で再処理した場合は直接処分に較べてコストが高くなる一方、高速炉で再処理した場合は「試算なし」となっているが、コストダウンの可能性がある・・・という澤田先生からの補足説明もあった。

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総合資源エネルギー調査会原子力小委員会第6回会合資料3
「核燃料サイクル・最終処分に関する現状と課題」(平成26年9月)より

生徒たちからの事前質問状にある通り、国が使用済み核燃料の処分方法としている「地層処分」は核燃料サイクルの一環である。原子力発電というものが、使用済み燃料の有害度の問題もサイクル全体のコストの問題も高速炉が実用化されればかなり解決できるということを想定して(期待して)進められてきたことがわかる。

現在既にある使用済み核燃料の処分の観点からは「核燃料サイクル」政策を維持するのが得策というか必要である(本当にできるのかどうかは別として)という説明をしてくれたら、もう少し国民合意に近づく可能性があると思うのだが、どうなんだろう? それでもやはり「もんじゅ」は廃炉すべきなのだろうか? 目的や手段がわからなくなる。

www.huffingtonpost.jp

現にある使用済み核燃料(プルトニウムウランを含み95%再利用可能?)を
潜在的な有害度(仮に人間の体内に入った場合の有害度。放射能とは異なる)が
天然ウランと同程度になるまで、10万年間埋めておく方法を考えたほうが良いのか?

あるいは、高速増殖炉の稼働による核燃料サイクル完結の可能性に賭けて、使用済み燃料からプルトニウムウランを取り出す再処理をした残りの核分裂生成物などの高レベル放射性廃棄物をガラス固化体にして処分するほうがよいのか?

・・・難しい問題だ。

中学生たちにはNUMOの説明がどう聞こえただろうか?

事前の質問状の立派さとは裏腹にその場ではシーンとしてしまいがちではあったが、2つほど質問が出た。

Q(中一女子):少しおかしな質問だとは思うんですけど・・10万年単位の変化などは予想しづらいが、もしも大きな変化が予想され危ないと思われるような場合には(放射性廃棄物を)移せるような準備をしているのでしょうか?

A:ありがとうございます。結論から言うと、よほどのことがない限り移すことはないと思いますし、そういう移さなくていいような処分をするというのが我々の考え方です。六ヶ所村で地表の近くに処分している(低レベル)廃棄物というのは、ある一定期間(300年間とか)人間が管理をして、その後はもう管理しなくていいよというやり方ですが、地層処分というのは、人間がずっと管理を続けていると、何万年間もずっと管理しなくてはならないので現実的にはできないということで、人間の管理に頼る処分ではなくて、安定した地下深くに処分して自然に任せようという考え方ですので、何万年間もモニタリングを続けていて何かあったときに「あぶないから取り出そう」ということは想定していないですね。そういうことが必要ないような処分をするということです。(との回答の後、確かに何万年後の状況を正確に言い当てることはできないが、悪いデータを積み重ねた最悪の場合を想定してもそれほど人間に影響を及ぼさないような処分を設計していくという趣旨の補足あり)

Q (中二男子):日本以外にこの沿岸海底下処分を検討している国はありますか?

A:高レベル放射性廃棄物を沿岸海底下に計画として処分しようとしている国は私が知っている範囲ではないですね。ただ、先ほどスウェーデンの例で申し上げたように、中・低レベル放射性廃棄物を実際に海の底に処分しているという国はスウェーデン以外にもあります。フィンランドの処分場は半島の先の方にあり、周りは海なので、陸線から出ないように処分するということですが、海水域が変われば部分的に海の底に入る可能性もじゅうぶんあるわけで、地下水もあの辺は海水になりますので、ほとんど沿岸海底下に処分するのとあまり変わらない条件で処分しているという事例はあるということになります。

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さてさて、実際に地下500メートルがどんな所か自分で体験してみて、それから地層処分を担う機関の専門家の説明を受けた上で、明日はどんな話し合いになるのだろう。(続く)