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よろず編集後記

よろず編集者を目指す井内千穂のブログです。

中学生サミット2017その③ どうする!?核のごみ

翌朝、討論会場に移動し、この「中学生サミット」のメインイベントである中学生によるダイアローグ(対話)セッションが行われた。

今回参加したのは、横浜の中学1年女子4名と中学2年男子3名、青森県六ヶ所村の中学1年男子3名の合わせて10名の中学生達。全国6地域の中学生が集まったという昨年と較べると今年は学校数も生徒数も少ないが、少人数ならではの話しやすさもあるかと期待して会場に向かう。

この企画の眼目でもある中学生自身のファシリテーションによる話し合い。ファシリテーター役を務めた横浜の中学2年男子3人組は、昨年のサミットにも参加した生徒たちで今年は先輩として話し合いをリードする立場に回った形だ。彼らはどんなふうに話し合いを進めていくのだろう。

・・・すぐに話し始めるわけではないようだ。

まずは、「核のごみ」の処分方法として、

  • 高レベル放射性廃棄物の地層処分
  • 使用済み核燃料の直接処分
  • 高レベル放射性廃棄物の沿岸海底下処分

それぞれについてメリットとデメリットを整理するという作業が始まった。

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各自が付箋にメリットとデメリットを書き出し、ホワイトボードに掲げられた模造紙に貼っていく。ふーん。先日見た高校生の白熱教室ではしばらく話し合ってから、この付箋を貼って話を整理する手法が使われていたが、今回は最初にこれをやって論点を整理してから話し始めるということだろうか。いずれにしても中学生自身のアイデアだし、そう言えば、事前に提出された要望書(企画趣意書)にもそう書かれていた。

時々ファシリテーター役の3人が「思いつきでもいいので」とか「疑問とかあったらNUMOの方に聞いてもいいので」などと声をかける以外は粛々と作業が続き、会場はシーンと静まり返っている。

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話し合うんじゃなかったっけ?と思ったけれど、とりあえず大人は黙って見守ろう。8時半前から始まった付箋を貼る作業が9時過ぎまで続いた。

次に、1年生の7名が2グループに分かれ、今まで作業した3つの処分方法のいずれかについて似たような付箋を整理してメリットとデメリットをまとめるようにと2年生のファシリテーターから指示があり、「使用済み核燃料の直接処分」と「高レベル放射性廃棄物の沿岸海洋下処分」について、それぞれまとめることになった。グループは2つだから「問い」が1つ余るが(ん?)・・・まあいいか。中学生の発想は大人の形式論とはちょっと違うのかもしれない。

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グループは、六ヶ所村の男子3名と横浜の女子4名をそれぞれ2つに分けて組み合わせる形で作られたので、他校の異性と話し合う格好だが、自分の中学時代を思い出しても、思春期の微妙な年頃の子たちにそれはなかなか難しいだろうと思われた。六ヶ所村の男子1人に横浜の女子2人というグループではかろうじて会話があったようだたが、もう一方のグループは同じ中学の男子同士、女子同士でメリットとデメリットを分担してしまうと相互の対話はほとんど見られず、相変わらず静けさが支配する会場である。

グループワークの間に、ファシリテーター役の3人にこっそり声をかけてみたら、昨年と雰囲気が全然違って時間が余りそうだと焦っていた。昨年は地層処分に賛成の立場と反対の立場に分かれて議論するディベート形式の会だったそうだが、「昨年と全く同じことをやるのではなくて」、今年は違った“対話”をしたいと考え、その前提として参加者が知識・認識を共有しようという趣旨で、このメリットとデメリットの洗い出しを行うことにしたという。なるほど。なぜグループが2つなら、地層処分と直接処分の2つを較べる形にしなかったのか?と聞いてみると、今回せっかくNUMOの方に沿岸海底下処分という新しい話題を聞けたので、そのことについても考えてみたいと思ったからという話だった。ふーん。それにしても、昨年はもっと参加者数が多かったし積極的に発言する生徒が多くて大いに盛り上がったのに、今年は参加者が少なく、みんなおとなしくて困った。どうしよう・・と言っている。

9時20分から10時過ぎまでグループでのまとめ作業が続いた後、各グループからまとめた内容の発表があった。

中1Sさん:直接処分のメリットは、原子炉が少ない国ではあまり燃料を使用しないので、軽水炉で再処理するよりもコストが安くていいということで、しかし、高速炉で処理した場合はそれよりもコストが安くなると言われているので、全体的に見ると、軽水炉で再処理する場合はメリットとなります。

中1I君:直接処分のデメリットでは、固化体にするときよりも・・・・(しばらくメモを見ながら相談)・・・再処理していないため資源がもったいないこと、(有毒でなくなるまで)時間がかかること、また、熱を持つために間隔が必要で(最終処分場の)面積が多く必要なこと、放射能が漏れだしたりすることなどが考えられます。

中1Nさん:私たちのグループは高レベル放射性廃棄物の沿岸海底下処分についてまとめました。最初にこの処分方法のメリットです。まず、沿岸海底下処分はロンドン条約に抵触していません。また海の深い所では水の流れが遅いため今後の予想がしやすく、地震津波の影響を受けないので安全です。そして海底なので場所を広く使うことができます。このようなことを含め、地域住民の人への影響が少ないことも沿岸海底下処分のメリットだと思います。

中1Ki君:高レベル放射性廃棄物の沿岸海底下処分のデメリットは、海水準が約10万年周期の気候変動によってプラス5メートルからマイナス120メートル程度の範囲で変動すると考えられているため管理がしにくく、300メートル以深を確実にするのは不可能ということと、斜めに作ると真っすぐに掘るより長い距離を掘ることになるのでコストがかかるし、傾きがない場所に較べて事故が起きやすいということと、海岸線の変化により多様な地下水の動きが存在してしまうことです。最後に、「領土問題」についてまとめることができなかったので、書いた人から実際に説明してもらいます。

中1I君:えっと、処分する所が他国に入ったりしないように、そういう問題点を挙げました。

(拍手)

今回は大人のギャラリーのほうが人数が多いぐらいの場で、やや緊張気味の訥々とした発表だったけれど、言っていることはなかなかしっかりしている。こうして真摯に課題と向き合い、考えようという姿勢はすばらしい。さて、いよいよこれから「話し合い」が始まるのか。

休憩後10時半過ぎから再開。相変わらずの静かな雰囲気に、ファシリテーター役の3人組はここから先どうやって話し合いを進めたらいいのか困惑しているようだ。「自由に話し合えって言ったら絶対に身内同士で固まる」とか「そういう風にしたら発言しにくいと思う」とか言っている。澤田先生が助け船を出す形で10人が輪になって座って話すことになった。このあいだの高校生の白熱教室と同じ形式だ。

「全員で考えて」「何か決めなきゃいけない場合どうしたらいいと思う?」「論点を決めて話してみたら」という澤田先生のアドバイスに「そんなのできるか?」と半信半疑の司会のK君だったが、とりあえず隣同士で話してみることに。

隣の生徒と話す囁き声は間近まで寄っても聴こえないぐらいだったが、時折「対話」が辛うじて聴こえてきた。

「どうですか?核燃料サイクルは続けるべきなのかな?どう思う?俺は止めるべきだと思ってんだけど」

「まあでも使用済み核燃料で捨てるものはこれ以上減らすことはできないからね」

「ほかの国も諦めているんだから日本もとっとと諦めるようにと思ってるんだけど。だいたいできると思う?ぐるぐる回す高速炉なんて大人が夢みたいなこと言ってるけど、できなさそうじゃん。え?そういう話じゃないの?」

隣の人としばらく話してみるものの、ファシリテーター役3人組はなおも進行に苦心する。

・・・「人変えてみる?今度右隣りとか」「それ変わんない変わんない」「じゃあT君」「急に振るのやめて」「じゃあねえ、私を基準に右隣りの人とお話できる?みんな静かだから。俺だとなんかみんな文句言うからY君ベースで進めていいよ。いい?いい?じゃあどうぞ」・・・

内輪もめし始めるセンパイ達の迷走に苦笑いを浮かべて顔を見合わせる中1女子。隣同士で話し合う第2ラウンド(?)が始まる。

・・・・ひどいと思わない?東京の人が六ヶ所村に再処理工場を作ってしまったんだよ。今は中間貯蔵施設。最終処分場となったら、昨日の話でも掘り起こすってことはないわけだから永遠にそこに埋めとくんだよ。俺は都会人が責任を持って東京とか神奈川に埋めるべきだと思うんだけどなあ。土地がないと思います。ああ、土地がない?なるほどねー。無人島?東京の人たちはどう?あ、神奈川の人。今まで地方に原発を押しつけていたわけだよ。最終処分場が来ていいと思う?これも押し付けなんだけど、福島の本当に原発の近くで線量が高くてもう二度と住めないようなところに最終処分場を作るっていうのはどう?線量が高くて近寄れないからそういう施設を作るのも無理だと思います。あーそもそもね。北海道?いや、北海道は条例でダメっていうことになってる。地方っていうのは人が住みにくいから人が少ないんでしょ?・・・

「また椅子チェンジしますか?」「えーっ?このタイミングで?」「え?もっと話し深める?」

・・・ガラス固化体。かわいそうに思えてきちゃうよね。なんか東京のせいでね。俺たちひどいことしてきたんだよね。俺達じゃないよ。上の世代がね。申し訳ないなって思うんだよね・・・

聴こえるか聴こえないかぐらいの様々なつぶやきがブツブツ言っているのは、なんだか大人の世界でも表立っては言わずに内輪でヒソヒソ話しているのと似ている。「子は親の鏡」と言うから、やはりこれは日本的な有り様なのか?はがゆい。それともファシリテーションの問題なのだろうか?とにかくこの声の音量を上げるにはどうしたらいいんだろう?まともな意見や対話の芽のようなものも聞こえてくるのに、全体で話し合う感じに発展しないのはもったいないなぁとぼんやり考えながら、できるだけ近くに寄って「隣の人との話し合い」を聴き取ろうと努めた次第。

・・・「じゃ、人変えるか?」「変えよう」「どうやって変えるの?」「これでいいっか。じゃ、私を基準に左隣の人とまた5分ぐらいしゃべってください。じゃ、どうぞ」・・・

・・・何か疑問とか出ました?そこのお二人、いちばん活発に議論してたみたいだけど。無人島に入れる場合に、人間の管理がなしでもいいのかあったほうがいいのか話し合ってました。だって、地層処分っていうのはそもそも人間の管理は要らないんでしょ?私はあったほうがいいと思います。テロとかが起きる可能性はあると思うから。いや、ここに埋めたとは言わないと思う。いつの間にかさら~っと埋めてると思う。憲法を改正したら核の軍事利用ができるのか?(と話が飛ぶ)・・・

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・・・「じゃあみなさん、11時18分ですが・・・そろそろこれも終わりにしてもよろしいでしょうか?もうお弁当食べたいですか?それともあと5分話したいですかね?」とY君の提案でこの場は一旦終了。

「じゃあお弁当食べながら聞きたいことがあるので」という澤田先生の言葉もあり、このあとも食べながら少し話が続くようだったが、私はここで別件のため急ぎで帰京せねばならず、後ろ髪引かれる思いで会場を後にした。

こうして、盛り上がったとは言い難いままダイアローグセッションの時間は終了した。最後のランチタイムはどんな感じだったのだろうか。(続く)