よろず編集後記

よろず編集者を目指す井内千穂のブログです。

中学生サミット2018その③ 六ヶ所バスケット

翌朝、再び八戸駅へ。青森県での滞在時間はトータルで24時間に満たない。せっかく日本各地からはるばる本州の北端まで来たのだから、もう少し長く現地の空気を吸いながら、昨日見聞きした真新しい知識と「物語」について、生徒たちが互いの感想や意見を交換する場があることを期待していたが、「そういう話し合いは東京でやります」というプログラムであった。どうも青森県内で「核のごみ」の最終処分場の話題はタブーらしい。とくに今は、近々の統一地方選挙への配慮といった大人の事情もあるようだ。私はオブザーバーの一人に過ぎず、企画段階に関与できる立場にはないため、このたびの関係者のやり取りの詳細は知る由もない。中学生や高校生がざっくばらんに話し合うことの何が問題なのだろう? 

早々に青森を離れることに軽い落胆と違和感を覚えつつ、大人のオブザーバーとしてはそれ以上どうこう言わず、とりあえず「帰京」の途に就いた。こちらのそんな気分とは関係なく、生徒たちは実に楽しげである。各々ささやかな青森土産を提げて新幹線に乗り込み、仲間たちと語らい、お弁当を広げ、ひと眠りできる車中も有意義な旅のひとコマ。「東京にも行けるのが嬉しい」と島根から参加した中学生は言った。好奇心いっぱいの生徒たちは、その場その場の体験に柔軟だ。

ということで、午後は都内お台場の科学未来館の交流施設で討論会。ここでもまた、生徒たちの柔軟な発想に感心する場面があった。

「中学生サミット」恒例の、生徒たちの 生徒たちによる 生徒たちのための対話である。当然、司会も生徒たちに任せるため、大人にも進行の予想がつかない。昨日来、団体行動してきたものの、ここまでは大体が同じ学校の生徒同士で固まって話していたであろう29名が、学校の枠を取り払って、対話しやすい形として澤田先生おススメの「椅子だけ使って輪になって」座るとかなり大きな円ができた。美術部の高校生のアイデアで瓢箪型にしてみる。面白いアレンジになった。

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まずは簡単に自己紹介。次に隣りの席の生徒を皆に紹介する「他己紹介」。それから隣り同士、昨日の見学で感じた疑問や意見を出し合い、片っ端から付箋に書いてホワイトボードに貼るという作業。ここまでは、これまでにもお馴染みの光景だ。

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ホワイトボードの付箋を数人が整理・分類する間に、残りの面々で話し合いが始まろうとするところ、「その前に」とファシリテーター役の東京の女子高生2人組から提案が。

驚いたことにゲームが始まった。

「みなさん、『フルーツバスケット』って知ってますよね? これから『六ヶ所バスケット』をやります。質問を言いますので、自分が当てはまると思った人は移動してください。椅子は人数よりちょっと足りません。座れなかった人たちには質問に答えてもらいます。」

六ヶ所バスケット!なんだか面白そうだ。

Q1「きのう、六ヶ所村で楽しめた人!」

生徒一同、立ち上がって走り回り、椅子に座れなかった生徒が回答する。

六ヶ所村のろっかぽっかという所でいろいろな話が聞けて楽しかったです。」

Q2「きのう、新しいことを学んだ人!」

またどっと走り出す。

Q3「きのうで六ヶ所村の印象が変わった人!」

Q4「再処理を外国でやったほうがいいと思う人!」

こんな感じで次々に質問が発せられ該当者が走って移動するというパターンが続いたところで、ふいに「六ヶ所村!!」という号令がかかると全員移動だ。生徒たちは瓢箪型に並べた椅子の中を走り回る。

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大人に対しては斜に構えた難しい年頃の中学生たちも、空いている椅子をめがけて必死で走る時は、天真爛漫な子どもに戻る。考えてみたらついこの間まで小学生だったのだ。初対面の硬さがだんだんとほぐれて、発言しやすい雰囲気に会場が温まってきた。

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話し合いの前にゲームをやると決めたのも、どんなゲームをやるのか考えたのも、「六ヶ所バスケット」のネーミングもファシリテーター役の高校生たちだ。絶妙なアイスブレイクを提供した柔軟な発想に拍手!(続く)

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 六ヶ所バスケットが盛り上がっていた頃、高校生2名と昨年からのリピーターである中学3年生が、みんなから出た意見が書かれた付箋を分類・整理していた。いろいろな意見が出ている。