よろず編集後記

よろず編集者を目指す井内千穂のブログです。

ツアー実施の判断 〜2020京都発ふくしま「学宿」その1

ご縁がつながり、今年も京都の中学生たちと一緒に福島を訪ねることができた。

今回は、福島県ホープツーリズムの一環として企画されたもので、いただいたしおりには、福島県教育旅行モニターツアー〜福島に来て、学び、考える!ふくしま「学宿」〜という長いタイトルが掲げられれ、その趣旨が書かれている。

  •  このツアーは、「各分野で復興に向け挑戦する福島の人々(ヒューマン)との対話」と「福島のありのままの姿(光と影)」に焦点を当てた学びのツアーです。震災・原発事故直後から現在に至るまでの復興の歩みや復興に向け奮闘を続ける人々の生の声を参加者の皆様に感じてもらい、ツアーを通じて福島の現状について理解を深めることはもちろん、震災・原発事故の教訓を踏まえ、これからの日本・地域の将来を考えてもらうことを目的としています。

 折しも新型コロナウィルスの感染拡大局面にあり、国内外のニュースやさまざまな立場の発言に翻弄される日々。今年も同行取材のお声かけをいただいたものの、本当に行けるのだろうか?と気をもんでいた。京都の学校側も福島県の受け入れ側も、時々刻々変化する状況を見ながら、実施か中止かの判断を迫られたことだろう。出発2日前の2月20日になってようやくツアー実施確定の連絡が来た。

その後もコロナウィルスの影響はエスカレートし、2月29日には安倍総理の記者会見、3月2日から全国の小学校・中学校・高校の休校を要請という事態に立ち至っていることを考えると、2月22日から24日の三連休に福島行きは、本当にギリギリのタイミングだったと言える。 一週間ずれていたら確実に中止されていただろう。

ツアー自体は実施しても、心配な保護者もいるだろうから、何人かはキャンセルするのではないかと思ったが、参加予定の生徒26人が全員出席だった。コロナウィルスの心配よりも、福島行きの意義と中学時代に一度だけの機会を逃したくないという気持ちが勝ったようだ。実はこのツアー、元々は昨年10月に予定されていたもので、その時は台風19号のために中止になった。仕切り直したら今度はコロナウィルスとは、全くいつ何どき何が起こるかわからない。

それなりの人数の団体だから、台風やウィルスの心配がない平常ベースでも、どこかへ行って全員無事に帰ってくることは当然ではなく、努力と幸運の賜だ。いつだって、事故や病気のリスクはゼロではない。心配し出したらキリがないが、私もかつて息子たちが学校行事に参加したら無事の帰宅を祈ったものだ。リスクがあるから実施しないとか参加させないとか言い出したら、修学旅行も部活の遠征も何もできないが、実際に引率される学校の先生方にはいつも頭が下がる。リスクは常に何にでもある中で、今回は新型コロナウィルスのリスクをどう考えるのか、微妙な判断を迫られつつ、生徒たちを福島に連れて行った先生方の覚悟と信念に敬意を表する。保護者のみなさんも先生方への全幅の信頼があるからこそ、我が子に旅をさせたのだろう。

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私は東京駅の東北新幹線のホームで一行と合流し、やまびこに乗り込んだ。

道中に関して、保護者の意見としては、京都から東京までの東海道新幹線、東京から郡山までの東北新幹線の車内ではマスクを外さず、飲食を控えて欲しいということだった由。マスクは周りにうつすのを防ぐには役にたっても、感染を防ぐには役に立たないと言われているが、親御さんたちの気持ちとして、周りにうつす心配をしておられたのか、感染する心配をしておられたのかはわからない(あの時点ではたぶん後者だ)が、ともあれ福島県に入ってからのほうが安全という感覚のようだった。この際、風評被害も関係ない。

ということで、昼食のお弁当を食べたのは、郡山駅で新幹線を降りて大型観光バスに乗ってからだった。バスの入り口にはアルコール消毒薬のスプレーが置かれ、乗り降りする度に誰かしら生徒さんが大人にもスプレーしてくれるのが微笑ましい。

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福島県の関係者の方々もみなマスクをしておられた。元来マスクが苦手で、「感染を防ぐのに役立たないならマスクをしても意味がない」と、このご時世でもマスクなしで出歩いていた私も、さすがにマナーとしてツアー中はマスクをすることに。持ち合わせがないという備えの悪さを反省しつつ、貴重なマスクを学校側のストックからご提供いただいた。申し訳ない。

昨年よりはるかに暖冬だ。曇り空の里山をバスは三春町へ向かった。(続く)

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