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よろず編集後記

よろず編集者を目指す井内千穂のブログです。

核のゴミの地層処分について考える場

原発から出る高レベル放射性廃棄物をどうするのか?

数年前まで私はそんなことを意識することもなく暮らしていた。この問題の深刻さに初めて気づいたのは、東日本大震災福島第一原発が事故を起こしたことがきっかけだから、まあのん気なものだったと恥ずかしく思う。折しもフィンランドの放射性廃棄物最終処分場「オンカロ」を扱った『100,000年後の安全』というドキュメンタリー映画が上映されていて何度か見たことを思い出す。

映画『100,000年後の安全』公式サイト

震災後も被災地の現地取材とは無縁の部署にいたが、あの頃にわかに注目された再生可能エネルギーの送配電を安定させるスマートグリッドや、電気使用量の可視化や蓄電・放電をコントロールできるスマートコミュニティに関する広告特集を担当することになり、全く知識のないテクノロジー関連の紙面を編集するためになりふり構わずアプローチしたネットワークから芋づる式に知り合った人々のうちの何人かが現在にもつながっている。

その中の一人、フリージャーナリストの稲垣美穂子さんは、大学在学中の2006年から高レベル放射性廃棄物の最終処分問題を取材して回り、ドキュメンタリー映画『The SITE』を2012年に発表したというツワモノだ。これは『100,000年後の安全』の日本版とも言える内容の作品で、高レベル放射性廃棄物を巡るきわめて日本的な現状が、体当たり潜入ルポによって赤裸々に映し出されていた。

www.uplink.co.jp

渋谷のアップリンクで開催された上映会&トークイベントに参加して、若い女性でこんなことやっている人がいるなんて!と驚いたものだった。なんとか記事にできないかと思い、その頃担当することになったジャパンタイムズの女性誌The Japan Times for WOMEN(日本語)で「行動する女性が地球を救う」という、なんとも大層なタイトルの特集を作って彼女の活動を紹介したのが、当時の私の立場でできるせめてもの被災地関連の記事となった。

それから数年ご無沙汰していたが、退職後に再び連絡を取るようになったのだから、人のご縁というのはまことに不思議で味わい深いものがある。この春先には一緒に福島の沿岸部を訪ねた。

先月、彼女の企画による地層処分についての勉強会に参加してきた。

勉強会と言っても堅苦しいものではなく、「地層処分について、気になるテーマを一つ設け、その専門家や事業関係者と市民が賛否を超え、直接ざっくばらんに話し合える小規模&カジュアルな場」だという。

ameblo.jp

日本では、原子力発電に伴い発生する使用済核燃料を再処理し、ウランプルトニウムを回収した後に生ずる高レベル放射性廃液を、ガラスで安定的な状態に固形化し(ガラス固化体)、30~50年間、冷却のため貯蔵・管理したうえで、地下300メートル以深の地層に埋設処分(地層処分)することとしている。

www.enecho.meti.go.jp

しかし、最終処分場をどこに建設するかはいまだに決まらない。

なにしろ、どんなに家の中を断捨離してスッキリさせても、私たちは原発開始以来50年分の核のゴミを捨てることができず、青森県六ヶ所再処理工場をはじめ各地の原発に貯めこんだまま、日々電気を使って暮らしているのだ。日頃そこまで意識することがなくとも、断捨離的な考え方で行けば、このゴミは世の中を覆う暗雲にかなり影響しているのではあるまいか・・・非科学的だろうか?

捨てたいのに捨てるに捨てられず、無害になるまでに10万年もかかる高レベルの放射性廃棄物が、ガラス固化体の形で現状でも2万5千本もあるのはどう考えても大変なことだ。

原発の再稼働に反対でも賛成でも、既に発生しているこのゴミをどうにかしなければならない。誰にとっても他人事ではないはずだ。しかも、もんじゅ廃炉するというのだからプルトニウムをどうするかも大問題になる。どうしたらいいのだろう?

そのような問題を独力で調べたり考えたりするのはとても難しい。しかし、そんなことは自分の力の及ばない領域であって、国や電力会社や原子力の専門家が考えるべきなのだと言って、人任せにしてしまって済むものだろうか? 電気を使っている市民として無責任ではないのか? そして、人任せにして放置したリスクは自分や自分の子孫にも降りかかるのだ。

自分のような素人の市民にも何かできることはあるのだろうか?

「関係者と市民が直接対話できる場や建設的な議論の土台作り」を提供しようと、今も地道な活動を続けている稲垣さんにまた会いたい!という気持ちもあり、二度目の開催となる地層処分カフェに行ってみた。今回はテーマは「地下水と地層処分」である。

会場に着いてみると、定員30名に対して参加者が私を入れて4人しかいなくてちょっと拍子抜けだった。今日の講師として、東京大学大学院新領域創成科学研究科環境システム学専攻の徳永朋祥教授が招かれている。そして、司会が稲垣さんということで総勢6名という状況。この少人数では東大の先生がちょっと気の毒だなあ・・と出席した私が思うのもなんだが、ちょっと寂しくないか。

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 しかし、結果的にこれがとてもよかったのだ。(続く)