よろず編集後記

よろず編集者を目指す井内千穂のブログです。

2022-01-01から1年間の記事一覧

楽都松本の人々 ~セイジ・オザワ松本フェスティバル30周年 その③

2008年の夏に初めてサイトウ・キネン・フェスティバル松本に行くことができたのは、実家の母のおかげだった。 かねてより、世界のセイジ・オザワのカリスマ性を求心力に錚々たる演奏家が集結するサイトウ・キネン・オーケストラには、興味も憧れも大いにあっ…

サイトウ・キネンの記憶 ~セイジ・オザワ松本フェスティバル30周年記念 その②

コロナ禍中、一旦ほぼゼロになった音楽会。感染状況に応じて開催方法を模索する大変な時期を経て、有観客の演奏会が復活してきたのは有り難いことだ。松本のフェスティバルもこの夏、3年ぶりの有観客公演となった。 そうした幾多のコンサートのうち、自分が…

晩秋のマラ9 ~セイジ・オザワ松本フェスティバル30周年記念 その①

どうも信州に縁があるようで、中学校の修学旅行、家族旅行、学生時代の農協でのアルバイト、最初の職場のスキー旅行、新聞社での取材など、何かと訪ねる機会が多いエリアだったが、晩秋の信州は初めてだ。中央線の車窓から見える枯葉色の山並みの向こうに、…

世界に一つだけのバラ、あるいは、あじさい?

ひと昔もふた昔も前のことになるが、SMAPの『世界で一つだけの花』という歌がヒットした。 「ナンバーワンにならなくてもいい。もともと特別なオンリーワン♪」 励まされるような気もするし、慰めにもならない気もするこの歌詞。当時の私は不快感を覚えた。 …

初心忘るべからず。そこからまた喜劇が始まる

田崎悦子さんのピアノリサイタルでシューベルトの遺作を聴いて思い出した拙短編「喜劇はまた始まる」の続き。 前編はこちら。 chihoyorozu.hatenablog.com ***** 「喜劇はまた始まる」(後編) その頃、ウィーン郊外のとある教師のつましい住まいでは、…

喜劇はまた始まる

田崎悦子さんのピアノリサイタルでシューベルトの遺作を聴いて、昔、ライタースクールの課題として書いた短編小説(笑)を思い出した。探してみたら、PCのフォルダーの奥の方から出てきた。懐かしくて思わず読み返す。恥ずかしい代物だが、せっかく発掘した…

シューベルト最後の3大ピアノ・ソナタ

また半年が経って初夏。このところ、田崎悦子さんのピアノを聴きに行くことで、とっ散らかった日々をリセットしている気がする。昨秋、田崎さんのブラームスを聴いた頃とは自分の状況もだいぶ変わった。今回はシューベルトの人生最後の大作ピアノ・ソナタを3…