地震、豪雨、台風、また地震、また台風と災害続きだったこの夏。その中では比較的平穏だった東京だが、猛暑の中の引越しはキツかった。既に会社員ではなくなったので、毎日の通勤地獄やフルタイム勤務はないものの、平日休日関係なく締め切りに追われるこまごまとした書き物仕事を続けながら、引越し荷物と大量のゴミと格闘するだけで気力体力を使い果たし、今年の夏は過ぎ去った。
9月も終わりに近づき急に気温が下がった頃、表でほのかに花の香りがした。
え?金木犀?早いな・・・
それに、金木犀がほのかな香りというのは妙な感じ・・・金木犀と言えば、もっとクセのある芳香剤のような強い香りではなかったか。昔は嫌いだった。
ほかの花だろうか?
訝しみながら歩いていると、近所で例のオレンジ色の小花をつけた木に出くわした。
今年はもう金木犀が咲いている!なんと早いこと。よく見るとほら、そこにも、ここにも、しょっちゅう買い物に行く近所のスーパーの入り口脇にも。そのこんもりした木は、実は金木犀だった。オレンジ色の小花をつけるまでわからないとは、相変わらずの植物音痴だな・・・
やはり、あのほのかな香りの出どころは金木犀だったのだ。
引越して来たこのあたりは住宅街とは言え、幹線道路に近く、しかも近くにガソリンスタンドがあるので、お世辞にも「空気がきれい」とは言えない。これまでに何度も転居した中では空気は悪いほうだが、諸々総合的に考えて決めた立地だった。
排気ガスやガソリンの臭いも身近に感じながら暮らす中で、金木犀の強い香りがほのかな上品な香りとして感知されたのだ。控えめな花の香りだったら、気づかないのかもしれない。薔薇や沈丁花の香りは国道沿いでも感じられるのだろうか?次の季節に確かめたい。
そんなわけで、もう咲いているとは予想していなかった9月のうちから、姿は見えなくとも金木犀の香りを嗅覚の端っこでほのかに感じていた。
そこへ日本列島を縦断した台風24号。10月になるという夜中、このあたりもかなりの暴風だった。首都圏の電車が夜には運休になることはあらかじめ知らされていたが、夜半、高円寺の立ち食いそば屋が倒壊したというニュースに驚く。JR四ツ谷駅で線路に倒木、京王線の明大前辺りでは倒れていた塀と電車が接触したとか。とりあえず新居のベランダや窓ガラスが無事で幸いだった。
台風一過。また夏の暑さがぶり返す帰路、ふと気になって金木犀を見に行った。あそこのマンションの敷地にあった金木犀はどうなっただろう・・・
ああ、だいぶ散ってしまった。それでも、枝に小花が結構残っている!
桜が舞い散る春の風雨よりもはるかに凄まじい、大木をなぎ倒す様な台風によくぞ耐えたものだ。おそらくまだ若い小花たちか?枝にしがみついて残った。そして、あたりには香りが漂う。
まだ10月になったばかり。少しでも続いてほしいと願う、今やほのかな金木犀の香りであった。ようやく爽やかな秋を迎えるのか。
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金木犀シリーズというわけではないけれど・・